2022年03月02日
弁護士の交渉スキル
弁護士は、依頼者から法的トラブル等の事件を受任すると、相手方と交渉することになります。
弁護士の交渉スキルは、事件の解決のために、非常に重要であると、私は最近つくづく感じているところです。
だからといって、私自身、交渉スキルに長けているとは全く思っていません。
日々の事件の中で、うまくいったりいかなかったり、悩みながら仕事をしているというのが、
実情です。
依頼者の方の中には、「事件の解決のためには、自分の主張・要望を相手に理解させることが重要だ。それが一番大事だ。だからこそ、弁護士に依頼したんだ。だから一歩も引かないでほしい。」という強い気持ちを持っている方もいらっしゃいます。
確かに、事件によっては、自分が当事者であるならば、そういう気持ちになってしまうこともありううることは、十分理解できます。
しかし、相手との交渉の中で、自分の主張・要望を押し通すことは、交渉が硬直化し、
事件解決をいたずらに長引かせるというデメリットも多いのです。
「損して得をとる」と言いますが、譲れないポイントと譲れるポイントを見極め、相手がこの条件なら乗ってきそうだというところまで、依頼者との打ち合わせで詰めておくことがとても大切だと思います。
依頼者の中には、「先生、最初から弱腰ですね」と言われる方もありますが、「そうじゃないですよ」「事件の解決のためには、見極めが大切なんです」「なるべく交渉で早く解決した方が、よいですよ」とお話して、理解してもらっているところです。
結局、トラブルになっているということは、こちら側に非が少なからずある場合が多いですから、
だからこそ、譲れないポイントと譲れるポイントの見極めが大切だと考えるのです。
相手方の代理人に就いた若手の弁護士の中には、交渉において、自分の依頼者の主張を
頑強に述べ、全く譲歩の姿勢を見せずに「裁判で解決するしかありませんね」と
安易に裁判をほのめかす弁護士が多く、閉口してしまうケースが少なくありません。
自分が当事者のようにすごく意気込んできて、自分の依頼者の主張・要望を延々と述べ、
法的知識や法的構成から「べき論」を延々と主張する。そして、はたまた、形勢が不利になってくると、これまでの主張を一方的に放棄して、新たな主張をしてきたりする。
このよう交渉態度に、こちらも振り回されてしまい、あきれ返ってしまうことが多々あります。
自分の依頼者の利益追求ばかりを考えて、結局、事件を解決しようという姿勢がない弁護士は、
依頼者にとっても不幸ではないでしょうか。
交渉で大切なのは、自分の立場を相手に理解してもらう(押し通す)ことではなく、
相手の立場の理解、相手が何にこだわっているかを理解することだと考えます。
そこで、どういうところで折り合いをつけるのか、双方の弁護士が知恵を出し合うことに、
依頼者が弁護士をつける意義があるのではないのでしょうか。
交渉の中で、弁護士が自分の依頼者の意向をそのまま述べるだけでは、それは伝書鳩と同じで、
全く意味がないことだと思います。
ある程度経験を積んだ弁護士の先生との交渉では、始めの電話で落としどころを見極めていて、
自分の依頼者を説得しようという意思が読み取れ、比較的早期に解決できる場合が多いと思います。
交渉において重要なのは、「依頼者と相手方との利害の調整」で、それができる弁護士は、交渉スキルに長けた弁護士と言えると思います。
私も経験を積んで、交渉スキルを地道につけていきたいと考えております。